メリケン事情

別宮先生のアメリカ事情

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アメリカはG8諸国のうちで日本に匹敵する一人当たり国民所得があります。すなわち英独仏より上位にあり日本とアメリカは上位グループ二国を形成しています。これは人口を考えれば、日本とアメリカともに、英独仏を上回りますから、圧倒的です。更にECとまとめたところで、日米をまとめたものにはかないません。

それでもアメリカを旅する日本人は何かアメリカに貧しさを感じることがあるのではないでしょうか。

 例えば、アメリカの都市にあるスラムは、とても日本の比較ではなく、市街の半分を占めるのかと思わせます。反面、都市の郊外に出れば1エーカーすなわち1200坪にプール付きの家は珍しくなく、学校の先生など中産階級が住んでいます。高級なところを選ばなければ2000万円程度で買えるのではないでしょうか。

 この生活スタイル自体は欧州や日本を上回ります。これとスラムが結合しないわけです。当然、貧富の格差につきあたります。

 またアメリカには中産階級の上か、別の階層か、アッパー・ミドルと言われる人々がいます。この人々は共稼ぎで年収3000万円以上あり、弁護士・医者・インベストメントバンカー・放送局のディレクター・中小企業のオーナーをやっています。この人々は概ね大都市近郊に住み、日本で行けば、都心まで車で30分の7LDKの家、車3台、プール、別荘を保有しています。ニューヨークのイーストサイドのマンション住まいもまあ同様でしょう。

 そして家は、24時間警備であり、一戸建ての場合ゲートで外部からの侵入を阻止している場合が多いようです。

 こういった生活は日本では不可能です。なぜかと言えば、アッパー・ミドルは使用人を雇っている場合が多いのです。例えば日本人もこのような家のホーム・パーティに招かれることがあると思うのですが、西洋料理とは皿を入れ替えねばならず、始めにドンと置く日本料理とは異なります。このため給仕する人間が必要です。つまりアッパー・ミドルの大半の家庭には使用人がいます。

そして誤解がありますが、この使用人にはあらゆる人種がいて、またアッパー・ミドルにもあらゆる人種がいます。そして日本では金持ちほど差別意識が高いと信じられていますが、アッパー・ミドルすなわち大学(院)卒業生が人種差別的言辞を吐けば、まず社会的地位を失います。

 ただそれでも何か人種の区別があるのです。

 これは不思議なことですが、アッパー・ミドルや中産階級の住む場所に人種差別はあまりありません。ところが、下層階級すなわち通い使用人をやる人々の住むところは人種で決まっています。

 つまりスラムが人種で区分けされているのです。これは新しいアメリカ人すなわちヒスパニックと呼ばれる中南米人や中国人は、都市のスラムの一定地区に居住することにもよるのでしょう。アメリカはよく人種の坩堝と呼ばれますが、金持ち以外は溶け合わず、モザイク国家の様相を呈しています。

 ではアメリカに住む現代日本人はどうか?

 これが笑わせてくれるのですが、日本企業は社宅をアメリカに限って保有することができません。理由は業界団体を通して外務省が事実上禁止しているためです。

 外務省の唱える理由は、日系アメリカ人は100年の努力によってアメリカに溶け込んだ、新参者が彼らの築いた地位を社宅なぞという日本の奇怪な制度をもちこんで「ナイガシロ」にするな、というものです。

ですが、現実にはあらゆる人種別グループのなかで日系アメリカ人は最も所得が高いのです。日系アメリカ人は弁護士や大学教授・医師などの専門職についている人々が多いためです。ユダヤ系やドイツ系があとに続きます。

 一方、日系人がアメリカで苦難の道を歩んだのも事実であり、こう言われると逆らう企業はまずありません。現在の日系アメリカ人の60%は日系人以外を配偶者としており、過去のようなグループで固まる傾向は全くありません。ただ戦間期の日系人の多くが天皇への忠誠を優先させアメリカへの忠誠を拒否し、アメリカ国籍をあえて求めませんでした。現代日本人も、それについて敬意を表さねばならない雰囲気があります。

 また現代日本人でニューヨークに駐在している人々はフォートリーという対岸のニュージャージーに住むことが多いようです。日本人の駐在員の妻は、現地人とは一切接触を断ち、外出は近くのアンパンを売っている食品スーパーと有名ブランドがある5番街に行くだけです。昔ニューヨーク市長が選挙で、これだけ町に目立つ日本人を囲いこもうと講演会を開きましたが、アメリカ国籍をもつ日本人はほとんどいなかったそうです。このやり方は戦間期の日系人と変わることがありません。

 つまり、日本人は世界でも希な「アメリカ人になりたくない」国民です。世界で「日本人になりたい」国民もあまりいないようなので、これは異常な事態です。

 理由はよくわかりませんが、一つには日本人は使用人を雇うことができず、とりわけ異邦人が家庭内に入るのをいやがるのではないでしょうか。つまり収入があり英語が喋れてもそれだけでアメリカ人になれるわけではないと思います。

 ともあれ、これだけ社会の様相の異なる国同士が同盟を組み、しかし溶け合おうとしないのも珍しいと言わざるをえません。
日本は全体の国富を増やそうとしてアメリカの経済政策また法令などを模倣することはできます。また実際やっていると思います。ところが社会に存在する芯のようなものは一向に変わりません。日本が独特だとか、独創性があることは全世界が認めているのですが、当の日本人は更なる独自性を追求するので、ますますおかしくなっているのではないでしょうか。

 つまりアメリカの政策のマネは今までもして来ました。そして今後もするでしょう。しかし社会の中味は一向に変わらず、そして日本人はその状態を心地の良いものと考えているようです。輸入して、オリジナル製品より良いものを作ることは実に至難です。それを日本人は苦にしません。アメリカ人もそういった日本人を好ましく思っているようです。

 日本人とアメリカ人の太平洋を挟んだ奇妙な関係は今後も続くと思います。

 経済も摩擦を幾度となく経験しましたが、日本の制度は徐々にアメリカの法令と同じまたは矛盾をきたさないものに変わりつつあります。日本はつい25年前まで資本自由化、為替取引の自由化に反対し、非関税障壁の撤廃に反対していましたが、現在では覚えている人も少なくなり、もし個人の円及び外貨持ち出しを政府が制限することがあれば、大問題となるでしょう。

 一方、日本は異質だとかアメリカは西ヨーロッパ文明の本拠地だとアメリカの大学教授は叫びますが、頼みの中産階級やアッパー・ミドルの家庭内電気製品の大半は日本の会社製品で、ユカタを着て寝て、日曜は盆栽に精を出す有り様です。

 それでも日本人はアメリカのような貧富の差を生じることは警戒し、アメリカ人はそれでも俺達は日本語でなく英語を喋っている、形而下のことは関係ないと思い続けるでしょう。


posted by 右野翼 滅罪 at 21:30 | Comment(0) | 【日記】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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