9・11テロの軍事的考察



昨日はあの同時多発テロから十年にあたる。あのテロの犠牲者に心より哀悼を捧げたい。
日本でも一部でアメリカの傲慢に対する警告であるとしてテロを半ば歓迎するような論もあるがあの卑劣なテロで24人の日本人が犠牲となったことも忘れてはならない。
この日が近づくと藤原帰一や井上ひさし、大江健三郎と言った進歩的文化人がアルカイダ擁護と反戦を繰り返すのが常である。
また彼らは『アメリカのような軍事大国でさえテロを受けたのだから抑止力など無意味である』と唱える。
こうした主張は無差別テロ擁護という観点で道徳的に劣るだけでなく事実としても誤りである。あのテロはまさにアメリカが『国防』を怠ったが故に起きたのである。

冷戦期、国防総省と双璧をなす合衆国の安全保障の要はCIAであった。彼らは共産主義による世界席巻を狙うソ連との虚々実々の諜報戦を繰り広げた。
だがソ連が崩壊するともはやCIAは無用の長物であるかのように見なされるようになった。
CIAにとり最大の試練はクリントン時代であった。クリントンは米民主党リベラル派の主張を体現したような人物であった。すなわち米国は経済に傾注すべきだとし、米軍の大規模海外展開を不要と見なした。また対外的には軍拡を続ける中国に対する宥和、対日強行姿勢であった。
90年代はCIAの『冬の時代』に他ならなかった。91年から職員の大量辞職が始まり全職員の20%にあたる三千人が局を去った。さらにクリントンは国防費削減の一方、情報活動そのものへの関心を失い報告書に目を通すことすらなくなった。CIA長官は大統領との面会さえ難しいという有様だったのだ。未来なきCIAからは毎年7%のペースでベテラン諜報員が辞職してゆくこととなる。
さらに衛星のの画像解析や通信傍受が主任務のNSA(国家安全保障局)も同様で42あった支局も20となり職員も半分に削減された。(軍事研究2011年3月号の阿部琢磨論文より引用)
あのテロの火種はクリントン時代にまかれていたのだ。

アルカイダのケニア・タンザニア大使館テロ、駆逐艦コールへの自爆テロはいわば必然として起きたのだ。クリントンはアルカイダに対する報復としてアフガニスタンへの限定空爆を実施しただがクリントンは地上戦をヴェトナム戦争を再来と恐れ実行しなかった。これはビンラディンにある種の自身を与えたつまりアメリカは空爆程度でアフガンに籠もっている限り手出しできないと。すでに航空機による無差別テロの兆候はあった。93年にはアルジェリアでエールフランス機がイスラム原理主義者にハイジャックされマルセイユに着陸した。フランス国家憲兵隊は当初従来のハイジャック、すなわちハイジャックによるコマーシャルとして犯行声明を読み上げ、身の代金と仲間を釈放しテロ支援国への逃亡を図るものと予想した。しかしパリに向かうため燃料を満タンにしろという要求で異変に気づいた、そしてアジトの捜索で犯行グループの目的は飛行機を爆弾にしたパリ上空での自爆と判明した。911に酷似しており最初の民間航空機によるテロの試みである。フランス国家憲兵隊は特殊部隊を強行突入させ、事なきを得た。そしてアメリカでも航空機による同時爆破テ
ロを企んだアルカイダメンバーがFBIに逮捕されたいわゆる『ボジンカ計画』である。このようにアメリカ同時テロの兆候はいくつもあった、だがアメリカは次なる脅威がイスラムテロと中国であることに気づかなかったのだ。9・11陰謀論者は『アメリカはテロの兆候を知りながらわざと無視した』というがもはやアメリカはだがブッシュ政権就任時、CIAの人員は一万七千人、海外展開要員は僅かに千人残りは海外勤務どころかデスクワークの経験しかないという有様であった。もはや自ら目と耳を塞いでいたのであった。それでもビンラディンの危険性を危険性を指摘する声をあったがそれはついに大統領まで届かなかった。 かくしてあの9月11日を迎えたのである。
このテロは『文明の衝突』などではない。片方が航空機による同時突入というプランに自信をもち、片方が本土攻撃など有り得ないとたかを括ったとき悲劇は起きたのだ。
これは我が国にとっても他人事ではない。現在、中国は空母保有で自信を深めつつある、そして民主党政権だけてなく多くの国民をさえも新たな日中戦争など非現実的だと嘲笑する。だが94年にトムクランシーの小説『日米開戦』でジャンボジェットを議会議事堂に突入させる描写を見たとき一体何人のアメリカ人がこれが実際に起きると予測しえたであろうか。
現代戦争とは常に奇襲、すなわち人々を戦慄させる非現実的手段で始まるのである。


posted by 右野翼 滅罪 at 12:36 | Comment(0) | 【日記】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。